前回お伝えした「歯周組織」
その中の「歯肉」について触れていきます。
まず「歯肉」には部位により異なる3つの名称があります。
- 乳頭歯肉
- 付着歯肉
- 遊離歯肉
乳頭歯肉
歯と歯の間の歯肉。
炎症を起こすと、腫れると同時に、正常時の健康的なピンク色から、やや赤黒い色に変化します。
また、炎症を繰り返す事で、歯肉が退縮し(歯茎が痩せると)歯と歯の隙間が目立ってきます。
付着歯肉
前回お伝えした「歯槽骨」(歯を支えている骨)にピタっとくっついていて動かない歯肉です。
遊離歯肉
歯頚部(歯の首元にあたる部分)の周囲に存在する歯肉。
といっても、いまいちピンとこないですね。
ネック部分が、ややゆるめで余裕のあるタートルネックをイメージしてください。
首元を覆う部分が「遊離歯肉」、体にピタっとついてる部分が「付着歯肉」といったところでしょうか。
普段耳にする「歯周ポケット」というのは、「遊離歯肉」の上縁から、「付着歯肉」の開始点までを言います。この「ミゾ」の事を「歯肉溝:シニクコウ」とも呼びます。※ここでの、組織学的付着機構の説明は省きます。
口腔内の清掃不良に応じて、歯周ポケットを深くしてしまう原因を2つ挙げます。
(1)遊離歯肉が腫れる(腫れた分、健康時より、上縁の位置が高くなる)
実際には起こりませんが、タートルネックのネック部分が顎の方に伸び、首元を覆う範囲が長くなるイメージ。
※実際にはポケットの底が深くなっている訳ではないですが、上縁が高くなるためにポケットの深さ自体は深くなるので、これを「仮性ポケット」と呼びます。
(2)ポケット底部に達した細菌による影響で、付着歯肉の構造が壊され、ピタっと付いてる部分が、より下の位置に落ちてしまう。
先ほどの衣類の例えで言うと、首元以降はピタっとしてるはずなのに、それが胸元まで、のびてゆるくなってしまってる状態。
その場合、うっかり食べ物の一部が、ゆるくなったネック部に落ちてしまって、胸元あたりまで下に落ちてしまったら、取り出すのはなかなか面倒ですよね。
歯周ポケットも同じです。洋服のようにパタパタして、首元から入ってしまった汚れを下から出せればいいですが、歯茎ではそうはいきません。
ポケットが深くなれば、セルフケアでは物理的にお掃除は行き届かなくなり、取り除けない汚れのせいで歯周組織の炎症は悪化してしまいます。
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