前回は「“モチベーションを高めないといけない”は本当!?~自己評価と達成力⑥~」というお話しでした。
※前回記事はこちら
今回は「苦しい時に頑張れないのは“心が弱いから”ではない!?~自己評価と達成力⑦~」というお話です。
どういう自分が“自分らしい?”
みなさんは、どういう自分が“自分らしい”でしょう?
例えば、いつも自分の財布の中にいくら入っていると安心しますか。
人により金額は違うと思います。
いつも5万円入っている人が、何らかの出費により残り千円となってしまったら、「これはまずい。ATMに行くなり、何とかしないと」と思うでしょう。
しかし、仮にですが、普段財布の中に千円しか入っていない人だったらどうでしょう?
特に何とも思わないかもしれません。
この差は何でしょう?
一方で、宝くじに当たった人が破産するという話もよく聞きます。
これはなぜかというと、「自分らしいと思う基準」をはるかに超えた金額を手にしたために、元の自分に戻そうとする「無意識」の強力なマイナスの力が働くためです。
元の居心地のよい基準に戻るまで浪費を続けてしまうのです。
これは人間の「恒常性維持機能(ホメオスタシス)」によるものです。
生物として長い間生き永らえるため、劇的変化をせずに、常に一定の状態で安定するような生物的な仕組みを、人間は持っています。
体温が急激に変化したり、心臓の鼓動数がめちゃくちゃだったりすると、物理的な存在である身体への負担が大きく、長い間もたないからです。
認知科学コーチングでは、この恒常性維持機能(ホメオスタシス)が体温や心拍数といった物理面だけではなく、“心(情報)”の部分にも及ぶと解釈しています。
自分の望むゴールを達成する上では、この機能が障害となってしまうのです。
つまり、「自分らしいと思う基準」、すなわち「自分自身に対して持つ無意識のイメージ」を変えない限り、様々なことにチャレンジしたとしても、元の自分に戻ろうとしてしまいます。
この「自分らしいと思う基準」「自分自身に対して持つ無意識のイメージ」のことを「セルフイメージ(自己イメージ)」と呼んでいます。
このセルフイメージの中には、「自分がそう思うだけでなく、他人からもそう思われているはずの私はこういう人間だ、という意味での自分像」も含まれます。
前回までに見てきたエフィカシー(自己効力感:ゴール達成能力の自己評価)は、この「セルフイメージ(自己イメージ)」により決まってきます。
※エフィカシーについては、こちらを参照
第20回 ”できないこと”は望まない!?~自己評価と達成力➀~
自己評価が高いから頑張れる
無意識部分も含めて、自分自身をどう思っているのか?
これが自分らしさである「セルフイメージ」をつくり、当たり前の基準をつくり上げていきます。
そういった理由から、頑張れないのは心が弱いからではなく、「自己評価が低いから」といえます。
スポーツにおいて「自分はいつも苦しい場面では頑張れないダメな選手だ」というセルフイメージを持っているなら、重要な場面で踏ん張ることは難しいでしょう。
逆に一流選手は「苦しい時こそ頑張るのが自分らしい」という、「自分は一流だというセルフイメージ」に支えられているからこそ、乗り越えられるのです。
次回も、この「セルフイメージ」について深堀りしていきたいと思います。