前回は、「ロックオン(集中)・ロックアウト(見えなくなる)」という人間の認知機能をベースに、「現在見えていない・認識できていない盲点(スコトマ)が自身の可能性を閉ざしている」というお話をしました。
前回の記事はこちら
今回もその続きです。
まずはトップ画像にご注目ください。
これはベルギーの画家である、ルネ・マグリット作の「イメージの裏切り(The Treachery of Images)」(1929年)という絵です。
これはパイプではない=パイプ以外の可能性を秘めている
パイプの下にフランス語で「これはパイプではない(Ceci n’est pas une pipe)」という文字が記載されています。
「えっ!? どう見たってパイプでしょ!? 」という声が聞こえてきそうです。
しかし、マグリットによれば、「これは、パイプのイメージ(絵)であって、パイプそのものではないから『これはパイプではない』のだ」、と。
そりゃそうだ、という感じでしょうか(笑)
当然のことを言っているようですが、実はこのことは、我々の日常においても重要なことを示唆しています。
これを「パイプだと認識した瞬間(ロックオン)」から、「パイプ以外の見え方が除外(ロックアウト)」されるのです。
これを「言語束縛」と呼んでいます。
言語束縛
いわば、「言葉に可能性が縛られてしまう」のです。
これが盲点(スコトマ)を生みます。
しかし逆に、「これはパイプではない」とすると、「パイプじゃなければ、何だ?」とパイプではない可能性を考え、探し始めます。
言語束縛も含めた、「前提となる枠組み・条件づけ・思い込み」を「コンディショニング」と呼んでいます。
前回記事でいうなら、「Q.○は何個あるでしょう?」に、最初からロックオンし、☆を見えなくさせているのは、コンディショニングが働いているからなのです。
「もう見た、知っている」など、何かを理解したつもりになると、他の可能性はすべて排除されます。
「これは、こういうものだ」と決めつけてしまうと、それ以上の情報が入ってこなくなるので、「他の情報が存在してないかのように思い込む」のです。
これは自身の潜在的な力を引き出す側面からも、非常におそろしいことです。
「不良の生徒」 = 悪いやつ !?
例えば、「不良の生徒」と聞いて、みなさまは何を想像しますか?
「不良の生徒=みんなに迷惑をかける、悪いやつだ!」なんて決め付けてしまう事もコンディショニングといえます。
完全に何かを理解したつもりになると、もう他の可能性を探さなくなってしまいます。
人間のゴール達成の見地から、「考えられること・認識できることが、達成できることの限界を決定する」という側面があります。
自分自身に対するコンディショニングにより、考えられること・認識できることが、狭められているとしたら、とてももったいないことですよね。
日本人は特に「前提となる枠組み」からスタートしたものを、改善や改良を加えて、「最適化」することを非常に得意としています。
「ガラケー」 = イノベーションを起こしづらい
例えば、それが携帯電話の場合、日本国内で独自の発展を遂げた「ガラケー」に象徴されます。
しかし、どんなに改善と改良を加えても、ガラケーという枠組みでは、「携帯電話の枠組み」を超えられないため、「iPhone」のようなイノベーションを起こしづらいのです。
これは日本の教育の中に「既存の枠組みや常識を見直し、疑問を持って、自分で物事を考えること」のようなものが入っていなかったことも、要因の一つであると感じます。
日本では「1+1=2」に代表されるような、「答えが一つしかない問題を解く」ことが主流です。
「○+□=2」のように色々な可能性を自ら考えることや、「△△の定理・公式」を疑問にもち、調べることなどは、どうしても「受験」というゴールを達成する上では、難しいところがありました。
(現在、「アクティブラーニング」で、この部分を埋めようという動きが、活発化しています。)
しかしこれは、何でもかんでも、むやみに全てを否定する、ということでは当然ありません。
自分の枠組みを超えたゴールを設定する事ができているか
重要なのは、「ほかに大事なことを何か見逃してないか?」と、「自身で一度立ち止まって考えてみる」ことなのです。
その際に「判断の基準」となるのが、「自身のゴール」になるわけです。
今のあなたのゴールは、あなたの現状を改善と改良するだけのものになっていますか?
それとも、今までのあなたという枠組みとは、かけ離れたイノベーションを起こすゴールとなっていますか?
ぜひ考えてみて頂けたらと思います。
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